就活でリクルートスーツは着なきゃダメ?

6月に入り、採用面接や選考試験が解禁になりました。今年は対面選考が再開されてきたのでしょう、オフィス街や電車で就活生をよく見かけるようになりました。「就活生?」って聞いたわけでもないのにリクルートスーツを着ているから「あっ、就活生だ」って一目でわかりますよね。

そこで、新コーナー初回にふさわしいテーマ。

就職活動や採用面接などで、多くの学生はなぜリクルートスーツを着るのでしょうか?
をプレゼンテーションの観点でお伝えします。

文責:脇谷聖美(プロフィールは文末を参照ください)

面接はプレゼンテーション

採用面接で、「あなたと一緒に仕事をしたい」「ぜひ我が社で活躍してほしい」「うちの一員になってほしい」と採用担当者から言ってもらえたらプレゼンテーションは成功です。
採用担当者はこのように言える人材との出会いを求めて面接をしています。
そのため、面接ではあなたを多面的に見ます。
ということは、あなたは多面的にアピールできるのです。

第一印象は重要と言われますが、初見3秒以内に印象は形成されます。
相手は無意識に印象を形成するための情報を次の順番で受け取っています。

国籍→性別→年齢→姿勢/態度→服装→身だしなみ→髪型→顔の表情→目線→声→口調→話し言葉→伝える内容

この順番は、メラビアンの法則7-38-55のルール、ベストセラー『人は見た目が9割」にも通じていますね。
採用面接に何を着ていくか、服装選びも面接プレゼンテーションの重要な準備です。
その服装に就活生がリクルートスーツを選ぶのはなぜでしょうか?

リクルートスーツの意図

“リクルートスーツ”といえば、色は黒か紺。スーツの中は白シャツ。ネクタイはえんじ系。アクセサリー無し。髪は黒。脚もとは黒の革靴。バッグはB4が入る黒い肩掛けカバン。ストッキングは肌色。
スカートかパンツかの違いがあるくらいでほとんど似通ったスタイルです。

この詳細な指定は、就活ハンドブックなどで“マナー”として紹介されていました。
そして、スーツ販売会社が学校に来て説明会(+販売会)をしているところも多いそうです。
だから誰もが似通っているわけですね。

リクルートスーツを着ることが就活マナーとするのは諸説ありそうですが、次の3つの意図は共通しています。

①社会人への意識を高める
②社会人としての身だしなみを整える
③相手への敬意や尊重を表す

この意図を満たした服装としてリクルートスーツが誕生したのです。
リクルートスーツを着用するか着用しないかを選択する前に、まずはこの意図を認識することをおすすめします。

リクルートスーツのあゆみ

リクルートスーツの誕生についてWikipediaでは次のように記述されていました。

(抜粋転載)
リクルートスーツ着用が広まり始めたのは、1976年に大学生協が伊勢丹との協力で就職活動向けのスーツの特設販売を行ったのがきっかけで、翌年からはデパートが一斉に追随したとか。この特設販売に携わった職員は、「リクルートスーツ」という言葉の生みの親とも呼ばれているそうです。

これ以前は、学生服(通称“学ラン”)を着用するのが定番で、就職活動に応援団から学生服を借りて企業訪問をする学生もいたとあります。就職活動は男子学生、と捉えていたことが伺えます。

女子学生は、1981年の女性誌の調査ではスーツが多数派ながらブレザー、ワンピースを着用する学生もいたとあります。1983年には、伊勢丹が女子学生向けのリクルートスーツを売り出し、男女雇用機会均等法が施行された1986年以降は、女子についても濃紺のスーツばかりという状況となっていったそうです。

Wikipediaより 

リクルートスーツ誕生とそのあゆみは、日本社会の働き方の変化を表していますね。
今の時代で就職活動をするには、この変遷を知り、変化してきた環境を捉え、リクルートスーツを着用するか着用しないか、その選択は自分で決めることをおすすめします。

リクルートスーツの功罪

学生は就職活動を始めるとたくさんの課題を抱えます。準備に忙しい中、課題のひとつ、服装の課題をリクルートスーツが解決してくれるとなれば、多くの学生は着用しますね。

リクルートスーツには細かな指定があるので何を揃えればよいかは明確です。販売会社が学校に来て一式販売をしてくれれば簡単に購入ができますし、価格もリーズナブルでお財布に優しいです。素材は化学繊維が多いので自宅で洗濯ができてすぐ乾くので清潔な状態で着用ができます。

このように、着用する学生には良いことばかりなので、リクルートスーツが一気に広まり、誕生から45年以上支持されてきたのでしょう。

ただ、リクルートスーツにも弱点があります。

・安価な生地を使用している → しわになりやすい、フィット感が悪い、傷みやすい

・縫製が簡素で粗い → ほつれやすい、激しい動きに弱い、傷みやすい

・デザインが画一的 → 個性をアピールしにくい、印象に残りにくい

生地や縫製は弱点改善の傾向にありますが、弱点を知ったうえでの活用をおすすめします。

採用担当者にとってリクルートスーツは一長一短です。

リクルートスーツを着用した学生との面接では、印象形成順の顔の表情→目線→声→口調→話し言葉→伝える内容に集中することができるので面接の効率化ができました。しかし、リクルートスーツを着ている学生との採用面接で“個”を掴むことが難しく、採用担当者の手腕であり悩みなのが実情です。

ですから、学生のうちにこの“個”を積極的にアピールできるプレゼンテーション力を習得することをおすすめします。

ストーリーで服装を選ぶ

服装もあなたのプレゼンテーションの一部です。

なぜその服装を選んでここに来たのかを語ることも自己アピールです。それがリクルートスーツであっても、です。

プレゼンテーションの成功は伝わる戦略を立てる準備から始めます。服装も戦略的に選びましょう。ストーリーをつくると戦略を立てやすくなります。

採用面接であれば、

 ・どこの会社へ行くのか
 ・誰に会うのか
 ・なぜ会うのか
 ・会ってあなたはどうしたいのか
 ・相手は会いたいと思ってくれているのか
 ・会ってなにをするのか
 ・会う日時はいつなのか
 ・どこで会うのか
 ・会う日の気候やお天気はどうなのか
 ・会う場所へのアクセスはどうするの

自分の家を出発して面接会場へ向かい、そこでキラキラと自己アピールしている自分の服装を選びましょう。このストーリーでは、自分も相手のことをイメージします。このことが面接であなたの魅力となって醸し出されるのです。

あなたを伝える重要な役割を果たすのが服装です。プレゼンテーションの伝わる戦略で服装選びの準備に取り組むことをおすすめします。

まとめ

リクルート(就活)スーツは着なきゃダメ?

「着なきゃダメ」ではありませんが、「着ておけば無難」ではあるでしょう。

「みんなが着ているから」では採用担当者にあなたのアピールは伝わりません。リクルートスーツを着用するか着用しないかは、リクルートスーツの意図、あゆみ、功罪を認識して、自己アピールにふさわしい服装を自分で選択することが大切です。

会社説明会や採用面接で「私服でお越しください」と言われることも増えてきています。自己アピールができる絶好のチャンスです。戦略的ストーリーで服装を選んで会場へ向かってください。そして、採用担当者から「今日はなぜその服装で来ましたか?」と聞かれたら、満面笑顔であなたのストーリーを熱く語ってください。

あとがき

読んでくださってありがとうございます。

新コーナーは皆さんの素朴な疑問や興味にプレゼンテーションの観点でお話をしていきます。ご要望のテーマをお寄せください。

ところで、皆さんはリクルートスーツを着ましたか?

私は着ていません。採用面接にはリクルートスーツを着るものだと知りませんでした。水色で裾や袖はレースカッティング、フレアスカート、半袖の上下セットアップを着て、人事面接を受けました。なぜリクルートスーツを着なかったのか、それは、女子学生向けに売り出されたのは1983年だったからでした。サポートがなく大変だったかも知れませんが、自分で考え、選択し、行動するしかなかったので、社会人になる準備をしていけたのだと思います。

当協会には、会社説明会での採用担当者のプレゼンテーション支援依頼や面接プレゼンテーションの相談が寄せられます。
採用活動/就職活動に“伝わるプレゼンテーション”を支援・指導します。
お気軽にご相談やお問い合わせをお寄せください。ご用命をお待ちしています。

プロフィール

脇谷 聖美(わきたに きよみ)

プレゼンテーション講師/人財育成コンサルタント
一般社団法人プレゼンテーション検定協会 代表理事
アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社 代表取締役
非常勤講師(弘前大学大学院、鹿屋体育大学)

 “「伝える力」向上”へ、社会人・学生・児童・シニアと幅広い世代に指導しています。伝えること・コミュニケーションなどの悩みや課題解決の相談にも寄り添う親身な支援・指導をモットーとしています。受講者から「楽しかった!」「ためになった」「もっと話が聴きたい」と声があがる講義はリピートしたくなると評判です。プレ検の試験官としても活躍中。受検対策や補講を担当し、合格へと導いています。