プレゼンテーションは準備で差が付く!準備のプロセスを理解しよう
プレゼンテーションの準備といえば、資料作りからいきなり取り掛かる人が多いと思います。前回使った資料を使い回して、時間短縮しようと思いきや、かえって時間がかかってしまったなんて経験があるのではないでしょうか?
プレゼンテーションの準備には効率的かつ効果的なプロセスがあります。せっかくの晴れの舞台、時間を有効に使い、しっかりと準備をすることで、あなたのプレゼンテーションの成功の確率を高めていきましょう。
今回は、プレゼンテーションの準備プロセスとはいったいどんなものなのかご紹介いたします。
プレゼンテーションの準備にはプロセスがある
あなたはプレゼンテーションをすることになったら、何から手をつけていますか? パソコンのプレゼンテーション・ソフトを立ち上げて、スライドの1枚目にタイトルを入力することから始めていませんか。あるいは、スライドの背景はどうしようかとテンプレートを探し始めていませんか。
もし、あなたがパソコンのスライド作りから準備を始めると、きっと、見切り発車で話し始めることになるでしょう。資料は作り込めず、想定問答の用意はできず、データは不足している、などと。あなたは、薄氷を踏む思いで、聴き手の前に立つことになります。
適切な準備は適切なプロセスで進めることです。次の5つのステップで準備に取り組みましょう。
1. 3P分析の実施
3つのP「PEOPLE(聴き手)」「PURPOSE(目的・目標)」「PLACE(場所・環境)」、この3つのPを分析することで、あなたは、だれに、いつ、どこで、なにを、なんのために、どのようにおこなうのか、プレゼンテーションの見通しが立ちます。つまり、プレゼンテーションに成功する戦略を立てることです。戦略なきことに成功はありません。
2.シナリオの構築
3P分析の結果に基づいて、聴き手の理解促進をはかることができるシナリオを作ります。たいがい、シナリオは伝えたいことで作成してしまいます。しかし、そのシナリオで聴き手は聞きやすいでしょうか?
伝えたいことが勝って、聞きたいことが聞けない、そんなシナリオになってしまいます。こうしたシナリオは、聴き手の理解促進どころか、理解を阻害するのです。
3.インタラクションの準備
話し手が一方的に伝え、聴き手はじっと無言無表情で聴いている、典型的なプレゼンテーションの1シーンです。
この一方通行のプレゼンテーションがよしとされる文化的な背景はありますが、プレゼンテーションの成功とは、聴き手が合意し、決定し、行動することです。 聴き手の立場に立って考えると、合意と決定と行動には、不明点や疑問の解消が必要です。そのためには、プレゼンテーションの場面での聴き手とのやりとりの想定間答集など、聴き手とのインタラクションを準備することが必要です。
4.ドキュメンツの作成
この段階まで準備が整ったら、投影スライドや配付資料など、必要となる視覚資料の準備に取り掛かります。ドキュメンツは、聴き手の合意と決定と行動を後押しする材料です。よって、聴き手の興味を湧かせ、理解を促進し、記憶に残すことができるドキュメンツを作成します。
投影スライドは見るもので読み物ではありません。文字が多い視覚資料は、理解と合意と決定と行動を阻害してしまいます。ドキュメンツは“パッと見てピンとくる”ものを作成しましょう。
5.リハーサルの実施
ここまでで、プレゼンテーションの中身が準備できました。最後に、本番を想定しながら、デリバリー(伝達)をしてみる最後の仕上げ、つまり、リハーサルを実施します。
聴き手を前にしている想定で、始めから最後まで、口に出して、ツールを使って通しでおこなってみます。本番の場所でリハーサルをおこなうことができればよいのですが、難しい場合は、できるだけ本番環境に近い設定でおこないましょう。
リハーサルでは、所要時間、話の展開、ツールの活用、発声、言葉遣いや言語表現、話し方、立ち居振る舞い、ボディラングエッジ、などを検証します。録画をして見直す、他者に立ち会ってもらってフィードバックをもらうことは有効なリハーサルです。
どうしても自分本位になるので気づかないことが多いです。リハーサルで重要なのは、いかに、聴き手の立場に立って“伝わるか”を検証することです。ぶっつけ本番で成功する確率は推して知るべしです。リハーサルでうまくいかないことは、本番でうまくいくわけがありません。
このステップで準備をするには時間が必要です。最初はぎこちないかもしれません。めんどうくさいと思うこともあるでしょう。ですが、確実にこのステップを踏んで、綿密にしっかりと準備に取り組みましょう。そうすれば、プレゼンテーションに成功し、ビジネスに成功し、そして、人生に成功していくはずです。決して大げさではありません。プレゼンテーションの能力は一生役に立つのです。
プレゼンテーションにおける準備の必要性
プレゼンテーションがうまくいかなかったと嘆く人の多くは「準備不足」「もっと準備をすべきだった」と口にします。
手を抜く、端折る、適当にやる、楽をしよう、やっつけ仕事をする、などなど。そのような準備を怠る人が必ず理由に挙げるのが「忙しいから」です。
忙しいからこそ、時間を有効に使ってプレゼンテーションの準備をすることが大切になります。
準備の取り組み方が、プレゼンテーションの成果を左右するのです。
忙しいことを理由に、準備の時間を省略して、プレゼンテーションに臨んでしまうと、うまくいかなくて当然と言えるでしょう。
大失敗しないまでも、目的を達成することはできません。目的が達成されなければ、業務プロセスを前に進めることもできないのです。結局、振り出しに戻ることになります。
準備の時間を惜しんだがゆえに、ツケが回ってきて、後で余計に時間をとられてしまっているのです。そうならないためには、投入する時間を “準備”の局面だけで捉えるのではなく、仕事全体として見ることが必要です。
とはいえ、準備に時間を使えばいいというものでもありません。プレゼンテーションには、適切な準備のプロセスがあります。ご紹介した5つの準備のプロセスをマスターすれば、あなたは、短時間で成果の出るプレゼンテーションの準備ができるようになります。
準備を怠ったプレゼンテーションは、なぜ失敗するのか
準備を怠ってプレゼンテーションに臨むと、どのようになるでしょうか。
プレゼンテーション当日、主役であるあなたは緊張に包まれながら壇上に向かいます。
颯爽と登場するはずが、プロジェクターのケーブルにつまずき、よろけながらも聴き手に挨拶をします。「本日はこちらのテーマ・・・」とスクリーン(モニター)を見ると、投影されているはずの1枚目が映っていません。謝罪しながら、パソコンを確認し、気を取り直して話し始めます。ところが、最初の台詞が出てこない。
思い余って、カンニング用の書類を取り上げますが、手が滑って、書類が床に散乱してしまいます。聴き手の失笑を買いながら、拾い集める。拾い集めてみたものの、書類の順番が狂って、何がどうなっているか頭が真っ白になってしまいました。
もはや聴き手は、あなたのプレゼンテーションの内容に注意を払うより、あなたの一挙手一投足に興味をもってしまいます。こうした事態にならないために、綿密にプレゼンテーションの準備をしましょう。綿密に準備をしけおけば、「大丈夫かな」という不安も小さくなり、プレゼン当日の緊張も和らぎ、聴き手の前で、このような失態を繰り広げなくても済みます。
業務プロセスを進め、ビジネスの目的を達成するために、あなたはプレゼンテーションに成功しなければなりません。当たり前のことなのですが、当たり前すぎて関心を忘れている人がいかに多いことでしょうか。成功しなくてもいい、としか思えないような準備をしてしまっているのです。しっかりと「プレゼンテーションの準備のプロセス」を理解して、プレゼンテーションを成功に導きましょう。
まとめ
いかがでしたか?
プレゼンテーションの達人はこんなに緻密な準備をしていたのです。みなさんもぜひ今回ご紹介した5つのステップで準備を始めてみてください。周りと差がつくプレゼンテーションになること間違いなしです。
監修
八幡 紕芦史(やはた ひろし)
プレ検創設者
日本におけるプレゼンテーション分野では、先駆者として、その能力向上や啓蒙活動に寄与。これまでに、企業や団体におけるプレゼンテーションの教育や支援、大学におけるプレゼンテーション技術の指導などを手がける。関連書籍や雑誌の執筆も多数、講演活動もおこなう など、プレゼンテーション分野の第一人者。
また、コミュニケーションに関して造詣が深く、一方で、経営コンサルタントとして、様々な企業や団体でビジネス・プロフェッショナルとしての必要なリテラシーを支援、開発、養成、指導の助言、指導、支援もおこなっている。
主な専門分野は、ビジネスに不可欠な戦略的思考と行動、およびコミュニケーション能力。例えばビジネス戦略、営業戦略、戦略的目標管理、商品開発、論理的思考技術、プレゼンテーション技術、ミーティング・マネジメント、チーム・ファシリテイション、多様性のマネジメント、変革のリーダーシップ、グローバル・ビジネス・マネジメントなど。
「戦略的プレゼンテーションの技術」
第1章:プレゼンテーションの戦略
第2章:プレゼンテーションのシナリオ
第3章:インタラクティブ・プレゼンテーション
第4章:プレゼンテーションのデリバリー技術
第5章:ビジュアル化技術
ワークシート集、参考資料
八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版 232頁 定価2,530円(本体2,300円+税10%)