プレゼンテーション上達への一歩!アウトラインで伝えよう

プレゼンテーションをする時、緊張で頭が真っ白になり言葉が出てこなくなったらどうしよう、と心配になることはありませんか? なんとかなるだろうと、出たとこ勝負でアドリブばかりだと脈絡のないプレゼンテーションになりかねません。

プレゼンテーションで聴き手を惹き付け、あなたとあなたの話の印象を残すには、快適で思わず聞き入ってしまうようなプレゼンテーションのアウトラインをもつことが大切です。

今回は、プレゼンテーションのアウトラインとは何か、どういった準備をすればよいかをお伝えします。アウトラインがあると、プレゼンテーションがグンと上達します。

聴き手が快適に聞けるかはアウトライン次第

プレゼンテーションでは、話し手が思いつくままに話すと聴き手には伝わりません。だからといって、話す内容をすべて書き出した原稿を丸暗記すると、途中で忘れてしまったときに言葉が出てこなくなります。

忘れることへの怖れがあると、つい原稿やPC画面を読み上げてしまいます。そうすると、あなたは自分が用意した内容を伝えることに注力してしまい、聴き手は置いてきぼりになります。置いてきぼりにされた聴き手は理解することを諦め、結果あなたの話は伝わらず、プレゼンテーションは失敗に終わってしまうのです。

プレゼンテーションで聴き手の前に立ったら何から話し始め、どのような順番で話し、最後に何で話し終えて聴き手の前から立ち去るか。この手順がプレゼンテーションのアウトラインです。

手順通りに進めると物事は円滑に進みます。円滑に進むプレゼンテーションでは、聴き手は快適さを感じます。快適さの中で聴き手に理解させ、合意と行動を獲得できれば、プレゼンテーションは大成功です。

もし、プレゼンテーションの途中であなたの話が途切れてしまったり、何を話しているのか分からなくなったり、話が脱線したままとりとめのない話になったりすると、聴き手は理解どころか聴いていることに不快さを感じ始めるでしょう。聴き手が快適に聞くことができるかどうか、それはプレゼンテーションのアウトライン次第なのです。

プレゼンテーションのアウトラインとは?

プレゼンテーションのアウトラインは、プレゼンテーション全体を大きく「イントロダクション」「ボディ」「コンクルージョン」の3つのフェーズに分けます。

1.イントロダクション

イントロダクションは、プレゼンテーションの導入フェーズです。聴き手にプレゼンテーションへ注意を喚起し、「この先を聞きたい」と興味をわかせましょう。

聴き手の前に立ったら大きな声で挨拶をします。これから話すのは“私”としっかり伝わるようにゆっくり自分の名前を述べます。そして、聞いてくれることに対するお礼を添えます。この手順を踏めば、たとえ会場がガヤガヤしていて聞き手が注意散漫になっていたとしても徐々にあなたに注目をするでしょう。

次に、聴き手の課題を提起します。そして、その課題解決となるこのプレゼンテーションの結論を述べ、ロードマップを示します。ロードマップとは本でいう目次のことです。課題と結論とロードマップが論理的につながっていれば、聴き手は当事者意識をもち、聞く姿勢は準備万端になります。

もし、話し手が話したい理由や経緯を長々と話してしまったり、聴き手の聞く必然性が不明確であれば、聴き手は早々に飽きてしまい、内職を始めたり、睡眠不足を解消したりします。

イントロダクションは、軽快にテンポ良くロジカルに進めましょう。

2.ボディ

ボディはプレゼンテーションの本論フェーズです。聴き手の理解を促進しましょう。

イントロダクションで述べたロードマップ(目次)に沿って、結論を証明する情報をロジカルに述べます。あなたには伝えたい話がたくさんあっても、聴き手が受け取りやすいように整理して話す必要があります。理解促進に効果的な整理方法はロジック・ツリーで話を組み立てることです。

ロードマップは、プレゼンのアウトラインをイントロダクション、ボディ、コンクルージョンの3つに分けたのと同じように、聴き手が聞きたいことを聞きたい順に大項目3つに集約します。3つという数は論理的な組み立てがしやすく、話し手は理路整然と話すことができ、聴き手の理解も自然と促進します。

もし、話し手が話したいことをダラダラと話してしまったり、論理の飛躍があったり、情報過多や情報不足があったりすると、聴き手は理解することを止めてしまいます。ボディは、聴き手の立場にたったロジックを組み立てましょう。

3.コンクルージョン

コンクルージョンはプレゼンテーションの締めくくりフェーズです。聴き手をプレゼンテーションの結論に合意させ、行動に導きましょう。

聴き手の理解を明確にするためにボディの内容を要約します。ロードマップの大項目3つを繰り返してもよいですが、重要事項を強調して要約するほうが効果的です。

そして、合意を決定的にするために、イントロダクションで述べた結論を再度述べて合意を念押しします。合意に躊躇している聴き手がいるようなら質疑応答で対応することになりますが、足下をすくわれないように毅然とした応答をしなければなりません。玩具のジェンガのごとく、せっかく積み上げた理解をゴール間近で崩してしまいかねません。安易に「ご質問は?」と口にしないよう、質疑応答には十分なる留意が必要です。

結論を再度述べたあとに、聴き手を行動へ導けるよう、次に何をしてほしいか具体的に述べることが効果的です。あやふやなままでは行動に踏み出せず後回しになりがちですが、次に何をするか背中をポンと押されると行動しやすくなります。後でではなく、今行動、と導くことが大切です。

そして、行動することに対する聴き手の迷いをなくすには、聴き手を感動させてプレゼンテーションを終えることです。人が人に伝えるプレゼンテーションですから、話し手と聴き手とが心を通わせられるように気持ちを伝えましょう。

もし、プレゼンテーションの締めくくりに「ご検討ください」「もしよろしかったら」と口にすると、聴き手は「いま決めなくていいんだ」「そんな程度なんだ」などと行動をやめてしまいかねません。

コンクルージョンは、聴き手から拍手やお礼を受けられるよう最後まで気を抜かず締めくくりましょう。

アウトラインで話すメリット

メリットその1.伝えたい話の内容をまとめやすい

あなたの頭の中には伝えたい話がいっぱいあるのではないでしょうか。プレゼンテーションのテーマが専門分野であればなおのことです。

その頭の中にあることをそのまま口から出すと、思いつくまま話していることになります。聴き手の頭の中はあなたの頭の中と同じではありません。思いつくまま話されたことを自分なりに受け取ります。結果、伝えたことと伝わったことが異なってしまいます。言った言わない、聞いていない、話が違う、といった失敗は思いつくままに話したことによって起こるのです。

アウトラインに沿ってあなたの伝えたい話をまとめましょう。そうすれば、伝えたことと伝わったことがシンクロするプレゼンテーションになります。

ただし、まとめる視点は聴き手の視点です。聴き手の受け取りやすさを配慮して、聴き手が聞きたいことをまとめることが重要です。

メリットその2.スピーキング・ガイドの役割を担ってくれる

スライドを順々に進めることがプレゼンテーションだと思っている人がいます。

しかし、プレゼンテーションの話し手であるあなたはそのテーマに精通している人であり、専門分野であり、熟知している内容です。たとえ、パワーポイントやスライドがなくてもプレゼンテーションができるはずです。

プレゼンテーションをアウトラインに沿って準備しておけば、あなたのスピーキング・ガイドとなって円滑なプレゼンテーションが進行でき、聴き手に快適さを提供できます。途中で忘れたり脱線したりしてもスマートに軌道修正ができ、あなたは自信に満ちた態度でプレゼンテーションをすることができます。

アウトラインの流れを頭の中にたたき込んでおけば、突然の指名であっても専門家として堂々としたプレゼンテーションで信頼を強固にすることができます。さらに、プレゼンテーションで聴き手に合わせてアドリブをいれることができます。

伝える内容を丸暗記していると、聴き手の反応とは関係なく一方的にプレゼンテーションを進めてしまいます。プレゼンテーションは双方向のコミュニケーションが成功の鍵です。聴き手が自分に伝えてくれていると思ってくれることが合意の決定打になるのです。アウトラインをスピーキング・ガイドにすることで、聴き手の反応を見ながら、事例を入れたり、進行に緩急をつけたり、内容を削ったり、順番を変えたり、千変万化できます。

聴き手に向かって話そう

プレゼンテーションであなたの前にはなにがありますか?

パソコンのモニターですか? 原稿ですか? 演台ですか? スクリーンですか? 手のひらに書いたカンニング・メモですか?

プレゼンテーションであなたの前には聴き手がいるのです。聴き手は、専門家としてのあなたのプレゼンテーションに注目しています。

アウトラインで準備をしていれば、あなたは聴き手に向かってプレゼンテーションができます。聴き手を理解・合意・行動へ導くために、聴き手が聞きたい内容を聞きたい順にまとめられています。何から話し始め、次は何を話し、最後に何を話して締めくくると円滑に進行でき、聴き手に快適さを提供できるか頭に入っています。手ぶらでプレゼンテーションができるはずです。

まとめ

プレゼンテーションで成功したい、上達したいと思うならば、アウトラインで準備しましょう。アウトラインを頭に叩き込んでおけば、原稿や資料を丸読みするプレゼンテーションから脱却できます。途中、アドリブが飛び出すほどの余裕が生まれるかもしれません。

聴き手を惹き付けるプレゼンテーション上級者を目指して、アウトラインをプレゼンテーションの準備に加えましょう。

監修

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

プレ検創設者

日本におけるプレゼンテーション分野では、先駆者として、その能力向上や啓蒙活動に寄与。これまでに、企業や団体におけるプレゼンテーションの教育や支援、大学におけるプレゼンテーション技術の指導などを手がける。関連書籍や雑誌の執筆も多数、講演活動もおこなう など、プレゼンテーション分野の第一人者。
また、コミュニケーションに関して造詣が深く、一方で、経営コンサルタントとして、様々な企業や団体でビジネス・プロフェッショナルとしての必要なリテラシーを支援、開発、養成、指導の助言、指導、支援もおこなっている。
主な専門分野は、ビジネスに不可欠な戦略的思考と行動、およびコミュニケーション能力。例えばビジネス戦略、営業戦略、戦略的目標管理、商品開発、論理的思考技術、プレゼンテーション技術、ミーティング・マネジメント、チーム・ファシリテイション、多様性のマネジメント、変革のリーダーシップ、グローバル・ビジネス・マネジメントなど。

戦略的プレゼンテーションの技術」

第1章:プレゼンテーションの戦略
第2章:プレゼンテーションのシナリオ
第3章:インタラクティブ・プレゼンテーション
第4章:プレゼンテーションのデリバリー技術
第5章:ビジュアル化技術
ワークシート集、参考資料

八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版 232頁 定価2,530円(本体2,300円+税10%)