プレゼンテーションで相手を合意に導く“論理的”なシナリオづくりとは?
プレゼンテーションでは、何を聴き手へ伝えるかが最も重要です。伝える内容があるからスライドや話し方などのビジュアルが映えます。プレゼンテーションでは外見以上に中身にこだわりましょう。中身と外見が一致しているプレゼンテーションは聴き手を安心させ、惹きつけることができます。
今回は、プレゼンテーションの「中身」に注目して、聴き手にとっても話し手にとってもわかりやすく、かつ説得力のある論理的なシナリオの構築法を解説します。
プレゼンテーションのアウトラインとシナリオ
プレゼンテーションで聴き手が聞きたいのは「結論」です。しかし、ただ「結論」を伝えるだけではプレゼンテーションの目的は果たせません。「結論」に対する聴き手の理解・合意を促し、最終的に「やってみよう」「やってみたい」と思わせるプレゼンテーションの中身が重要です。プレゼンテーションの中身が「シナリオ」です。
プレゼンテーション全体の流れ「アウトライン」とプレゼンテーションの中身「シナリオ」について詳しく知りたい人はこちらの記事も併せてお読みください。
※プレゼンテーション上達への一歩!アウトラインで伝えよう
- 「イントロダクション」で、「背景」と「結論」を伝える
- 「ボディ」で、「理由」を伝える
- 「コンクルージョン」で、再び「結論」を伝える
最初に述べる「背景」「結論」で、何を意図してプレゼンテーションをするのかを明確にします。先に「結論」を聞くことによって聴き手は、何のためのプレゼンテーションなのか理解した上で話を聞くことができます。「何が言いたいのか」「私に何を求めているのか」とイライラすることもなく、プレゼンテーションに集中できます。
次に「理由」で、最初に話した「結論」を証明するための内容を伝えて聴き手の理解を促進します。「理由」を聞くことで、聴き手の「なぜ」という疑問は解消され、プレゼンに引き込まれていきます。
最後に述べる「結論」は、聞いた内容と「結論」が結びついていることを再確認してもらい合意と行動へ導きます。最初に「結論」を聞いていても集中して内容を聞いているうちに「で、何をするんだっけ?」と忘れてしまいがちです。思考しているうちに「結論」があやふやになることもあります。最後にもう一度述べることで、「結論」を明確にできるためプレゼンテーションの場で合意と行動につなげることができます。
「シナリオ」は計算し尽くして論理的に「背景⇒結論⇒理由⇒結論」を組み立てます。「アウトライン」に沿ってプレゼンテーションを進めると聴き手は快適さを感じます。「シナリオ」を「イントロダクション⇒ボディ⇒コンクルージョン」の「アウトライン」に組み込むことで聴き手は快適に合意へ導かれるのです。
シナリオは「背景」・「結論」・「理由」のロジックが鍵
「背景」と「結論」、「結論」と「理由」は、聴き手の聞きたいことでシンプルなロジックを成立させることが重要です。このロジックが明確であり、聴き手にとって価値あるものであることが、プレゼンテーション成功の扉を開ける鍵になります。
聴き手が知りたいことは「結論」であるとはいえ、いきなり「結論」を述べるのは聴き手にとっても唐突感があります。「結論」の前に「背景」として、なぜこの「結論」を伝えるのかという必然性を述べると、聴き手はプレゼンテーションへと引き込まれていきます。
「背景」で聴き手の注意を喚起し、「結論」で興味をわかせてプレゼンテーションにインパクトを与えるのです。くれぐれも「背景」でダラダラと長々話してしまい聴き手の注意の糸を切ってしまわないようにしましょう。前置きは短くもインパクトのうちです。
イントロダクションで述べる「背景」と「結論」で聴き手に聞きたいと思わせることができたらプレゼンテーション成功への扉が開いたようなものです。そのためにも、「背景」と「結論」にロジックが成立していることが重要です。
たとえば、
「背景」:「日本経済の低迷と景気の後退が収益を圧迫しています」
「結論」:「今日は、御社の品質管理にわが社の製品をご紹介します」
これでは、聞きたいと思わせることは難しいですね。論理が飛躍しすぎていて、聴き手はピンとこないでしょう。
「背景」と「結論」でロジックが成立していないと聴き手の聞きたいことと伝える内容が掛け違い、すれ違いになってしまいます。さらに、ボディで述べていく「理由」で「結論」を証明したとしても聴き手とはすれ違ったままで理解を阻害し合意とはかけ離れていくでしょう。
「背景」:「日本経済の低迷と景気の後退から、消費者は少量良質の需要傾向にあります」
「結論」:「この需要に応えるため、少量良質が供給できるわが社の製品の採用を提案します」
このように、聴き手の課題でロジックを成立させた「背景」と「結論」を述べると、聴き手の聞きたいことと伝える内容とが一致するので理解を促進し合意へ導いていけるでしょう。
続いて、「結論」を証明するための「理由」について見ていきましょう。
「理由」は三部構成でロジックツリーをつくる
「結論」だけで聴き手を合意・行動へと導けたら最高のプレゼンテーションですが、そう簡単に聴き手を合意させることはできません。
聴き手は、「結論」で即決したくなったとしても「結論」を証明する「理由」を聞いてみてからと考えるでしょう。「理由」は「結論」の正当性を論理的に証明しなければなりません。プレゼンテーションの本論「ボディ」で証明するために伝えたいコンテンツ(内容)はたくさんあっても聴き手の理解促進のためには聴き手が聞きたいことに絞る必要があります。「結論」を証明する「理由」は、聴き手の思考とシンクロする“ロジックツリー”を組み立てましょう。
「理由」のロジックツリーは三部構成で組み立てます。「大項目」「中項目」「小項目」と3つの階層、各項目も3つずつの要素で構成する方法です。
階層の深さはプレゼンテーションの所要時間によって決まります。10分以下の短いプレゼンテーションならば「大項目」で三部構成をつくります。15分~30分程なら「中項目」までの三部構成もつくれるでしょう。1時間あるような専門的なプレゼンテーションならば「小項目」まで深い三部構成がつくれます。
三部構成のロジックツリーには3つのルールがあります。
- 「大項目」「中項目」「小項目」は従属関係
- 1項目1コンセプト
- 各項目の関係性が明確
■「大項目」「中項目」「小項目」は従属関係
「大項目」は「結論」に直結して証明する内容、「中項目」は「大項目」を説明する内容、「小項目」は「中項目」を詳細に説明する内容、とそれぞれの項目は上位項目に従属していることが必要です。
■1項目1コンセプト
ひとつの項目に複数の内容が盛り込まれていると聴き手は理解しにくく混乱していきます。何を述べているのかが明確に伝わるためにはシンプルであることが必要です。ロジックツリーの枠内には文章を書かずに箇条書き(フレーズ)で表現しましょう。
■各項目の関係性が明確
シンプルであっても脈絡なく並んでいたら聴き手は理解するのに努力を強いられます。話し手も忘れやすくなります。それぞれの3つに関係性を持たせれば理解も記憶もしやすくなります。関係性は7種類あります。時系列、地理的、エスカレイション的、論理的、弁証法、演繹法、帰納法です。
三部構成の3つのルールに基づいて「結論」を証明する「理由」のロジックツリーを組み立てると、聴き手の思考とシンクロすることができるでしょう。計算し尽くしたシンプルな三部構成は聴き手にとっても話し手にとってもわかりやすいシナリオです。複雑な構成よりシンプルな構成が聴き手の理解を促進します。
プレゼンテーションで伝えたいたくさんのコンテンツを聴き手の立場で整理してまとめられている三部構成が聴き手にとっては最も理解しやすいシナリオです。そして、論理的に構築された三部構成は聴き手にとって最も説得力があるシナリオです。
まとめ
聴き手が聞きたいコンテツ(内容)を吟味し、計算し尽くした聞きたいプロセス(順番)で構成されたシナリオは、プレゼンテーションで聴き手を意図する行動へ導きます。聴き手の思考回路とシンクロするシナリオをつくること、つまり、準備段階でプレゼンテーションの中身にこだわることが肝心です。中身があるからこそビジュアルが映えます。”映える“プレゼンテーションを目指すならば、シナリオづくりに力を注ぎましょう。
監修
八幡 紕芦史(やはた ひろし)
プレ検創設者
日本におけるプレゼンテーション分野では、先駆者として、その能力向上や啓蒙活動に寄与。これまでに、企業や団体におけるプレゼンテーションの教育や支援、大学におけるプレゼンテーション技術の指導などを手がける。関連書籍や雑誌の執筆も多数、講演活動もおこなう など、プレゼンテーション分野の第一人者。
また、コミュニケーションに関して造詣が深く、一方で、経営コンサルタントとして、様々な企業や団体でビジネス・プロフェッショナルとしての必要なリテラシーを支援、開発、養成、指導の助言、指導、支援もおこなっている。
主な専門分野は、ビジネスに不可欠な戦略的思考と行動、およびコミュニケーション能力。例えばビジネス戦略、営業戦略、戦略的目標管理、商品開発、論理的思考技術、プレゼンテーション技術、ミーティング・マネジメント、チーム・ファシリテイション、多様性のマネジメント、変革のリーダーシップ、グローバル・ビジネス・マネジメントなど。
「戦略的プレゼンテーションの技術」
第1章:プレゼンテーションの戦略
第2章:プレゼンテーションのシナリオ
第3章:インタラクティブ・プレゼンテーション
第4章:プレゼンテーションのデリバリー技術
第5章:ビジュアル化技術
ワークシート集、参考資料
八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版 232頁 定価2,530円(本体2,300円+税10%)
プレ検公式テキスト
「パーフェクト・プレゼンテーション」
第1章:プレゼンテーションを始めよう
第2章:聴き手分析
第3章:目的と目標分析
第4章:場所と環境分析
第5章:シナリオの構築
第6章:3部構成のシナリオ・ツリー
第7章:デリバリー技術
第8章:ビジュアル・プレゼンテーション
第9章:双方向のプレゼンテーション
八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版並製 431頁 定価3,300円(本体3,000円+税10%)