二番煎じの社長プレゼン

こんにちは!
協会事務局の遠藤です。

本日は、協会の代表理事・八幡紕芦史による
特別記事を掲載します。

プレゼンの専門家が感じる、昨今のプレゼンとは・・・!?

二番煎じの社長プレゼン

最近は企業のトップが新製品発表会などに出てきて、
ジョブズばりにプレゼンするのが流行っているようだ。
しかし、どの社長も二番煎じのプレゼンで個性がない。

ある新車発表会で大手自動車メーカーの社長のプレゼンを聴く機会があった。

いきなり迫力のある音と映像が流れ、
くだんの社長はジョブズのようにステージの袖から中央に向かって歩き出す。
両手を大きく振って元気よく、まるで園児の運動会のように歩き始めた。
けれども、背中が丸まっている。

ステージの中央で止まって、会場に向かって挨拶をする。
ぎこちなく大きく両手を広げ、早口で会社のコンセプトを英語で言う。
わかったようでわからない。

馬車の時代からクルマの歴史、そして、自社の歴史、創業者の苦労話へと続く。
その間も、ジョブズに見習ってか何度も両手を広げ、ステージを意味なく歩き回る。
ところが、この社長、何を言いたいのかわからない。
それに、スクリーンには動きの速い動画が映し出され話に集中できない。

たぶん、聴き手は今回新しく発表したクルマについて知りたいのに。
それでも、なにやらよく分からないコンセプチュアルな話が続く。
抽象的な流行コトバがポンポンと飛び出してくる。

何度も両手を大きく広げ、自分の話のリズムにあわせて手を上下に動かしながら。
展示されている新車の前をウロウロする。

この社長はどんな想いで新しいクルマを作ったのか、
それがユーザーにとってどんなメリットがあるのか、
まったく伝わってこない。

ひとしきり社長の話が終わったところで、超有名な野球選手がゲストとして紹介される。

同じようにステージの袖から登場する。
いかにも身体を鍛えている軸がぶれない歩き方で、しかも、背筋がまっすぐに伸びている。

精悍な顔付きで聴き手に向かって挨拶をし、ユーモアたっぷりの自己紹介をする。
マイクを胸の前でしっかり握り、派手なボディ・ラングエッジもなく落ち着いた口調で話し始める。
野球とクルマを、「チャレンジ」というキーワードでつなぎながら、非常に分かりやすい話をする。
思わず聴き手は聞き入ってしまっている。
話の最後もユーモアで締めくくった。

自分の思いを素直にかつ自然体で語っている野球選手が、もしこの会社の社長だったら、
きっと、このクルマを買いたいと思っただろう。