プレゼンテーションを成功に導くシナリオを組み立てよう!

プレゼンテーションをするときに、ずっと原稿を見て話してしまっていませんか?

プレゼンテーションで重要なのは聴き手に伝わることなのに、原稿を見て話しているだけでは、聴き手は置いてきぼりです。話し手は聴き手へアイコンタクトを送り、手ぶらで聴き手に向かって語りかけることが大切になります。

今回は、原稿を見なくても伝える内容をしっかり届ける、“シナリオ”を活用したプレゼンテーション方法について解説します。伝える内容を話し手も聴き手も分かりやすく組み立てるシナリオこそがプレゼンテーションを成功に導きます。

プレゼンテーションのお品書き

聴き手が聞きたいことを知りたい順番で聞くことができるように、話し手は吟味したコンテンツを計算したプロセスで提供することが必要です。

プレゼンテーションの“シナリオ”を用意すると聴き手は安心してプレゼンテーションに集中することができます。

レストランでの食事を想像してみてください。

シェフは吟味した素材を調理し、一品ずつテーブルへ提供します。お皿が空になって戻ってきたら、おいしく食べてもらえた合図です。計算されたタイミングですべての料理をおいしく食べることができたら、食べる人は満足です。席上にお品書きが置いてあると安心して食事を楽しめます。お品書きが無かったら、この先何が出てくるんだろう、そろそろお腹がいっぱいになってきた、と不安を抱えながら食事をすることになります。 プレゼンテーションでは、話し手がシェフ、聴き手が食べる人です。

プレゼンテーションは、話し手が意図した行動へ聴き手を導くことができたら成功です。

そのためには、プレゼンテーションの準備段階で聴き手が聞きたいことを掴む 3P分析から取り組みましょう。

3P分析では聴き手の課題と聞く目的と目標を明らかにします。その分析結果に基づいて聴き手の聞きたいコンテンツ(内容)を聞きやすいプロセス(順番)で組み立てていく、これがシナリオです。

話し手が計算して組み立てたシナリオをプレゼンテーションで聴き手にひとつずつ伝えていきます。話し手と同じシナリオを聴き手が受け取ることができると、聴き手の理解や合意を促進し、行動へと結びつけられ、プレゼンテーションは成功します。

自分の言いたいことを書き出して言いたい順番に並べ替えたシナリオでは、聴き手の理解や合意を得ることは難しいでしょう。

聴き手が知りたいコンテンツ

話し手の頭にある伝えたい内容と、聴き手の頭にある聞きたい内容は異なります。
プレゼンテーションで大切なのは、聴き手の聞きたい内容を伝えることです。

ところが、話し手は伝えたい内容を話してしまいがちです。これでは話し手と聴き手はすれ違ってしまいます。
伝えたいことを熱心に語ったとしてもすれ違いを解消しなければ、話し手も聴き手も無駄なエネルギーを費やすだけです。

聴き手分析と目的・目標分析で、聴き手の興味、関心、課題を明確に掴むことですれ違いを解消できます。
プレゼンテーションを成功させるシナリオは3P分析結果を反映させることが重要なのです。

『プレゼンテーション成功の決め手!3P分析から準備を始めよう』

「事実」ばかりを伝えるならば、聴き手を集めるよりも書類を配付するほうが聴き手は知りたいことをしっかり把握することができます。

「事実」に対する話し手の「意見」がないプレゼンテーションは、聴き手の判断にゆだねてしまうことになります。「だから何?」と言われるのが「事実」ばかり述べてしまい、「意見」のないプレゼンテーションです。聴き手が話し手から直接聞きたいのは「事実」に対する話し手の「意見」なのです。

担当者としての考え、現場の捉え方、専門家の見解を聴き手は知りたいのです。

だからといって、「意見」ばかりを伝えるプレゼンテーションは信頼性や説得力に欠け、自己顕示欲の強い人と思われるだけです。

プレゼンテーションでは、常に「事実」と「意見」をパラレルで示すことが必要です。「事実」には「意見」、「意見」には「事実」、事実と意見の関係がロジカルに伝えることができれば、プレゼンテーションは成功に近づくでしょう。

そして「事実」「意見」に加えてもうひとつ、人が人にわざわざ伝えるプレゼンテーションならば、話し手の「感情」を添えることが不可欠です。問題提起を無表情で淡々と伝えたら相手の問題意識を醸成できません。深刻な表情でゆっくりはっきりした口調で「感情」を伝えましょう。

プレゼンテーションを成功させるシナリオは、聴き手の知りたいコンテンツを「事実」「意見」「感情」の3つでバランスよく組み立てることが重要なのです。

5つ星シェフは、食べる人と食事の目的を事前にしっかり分析しています。だから、食べたい料理を食べたい調理方法で食べたいタイミングで提供でき、食べる人は安心して食事を楽しむことができるのです。

聴き手が聞きたいプロセス

次の文章を読んでどのように感じますか?

「ええっと…、みなさんは本を読むと思いますが、1ヵ月に何冊読むでしょうか。通勤電車の中で読んだり、昼休みに読んだり、あるいは、休みの日に机に向かって読んだりすると思います。ちょっとした時間を見つけて読む本と、じっくり時間をかけて読む本があります。世の中には、とばし読みができる柔らかい本と、専門書のような固い本があります。しかしながら、できるだけ時間を見つけて、多くの本を読むことによって、たくさんの知識を得ることができます。しかし、知識を得ることは…」

最初は「何冊読むでしょうか?」と投げかけられ「自分はどのぐらい読むだろうか」と考えを巡らしたでしょう。次に「通勤電車の中で…」の話を聴いて「自分もそうだな…」とか、「いや、電車の中では寝ている…」とか、通勤電車の中をイメージしたでしょう。

あなたは話を聴きながら話し手の言いたいことを何とか咀嚼しようと努力するでしょう。「時間をみつけて本をたくさん読んだ方がいい、と言いたいのか」「いや、知識だけでは役に立たない、と言いたいのか」と。多大な努力を強いられるため、そのうちに聴く努力を諦めて他のことを考え始めたり、スマホでメールを確認したり、しまいには眠りについてしまうかもしれません。

例として挙げた話は言いたいことが分からない、つまり、話の“結論”が分からない伝え方です。

聴き手が聞きたいのは話し手の結論です。

「何が言いたいのか」と聴き手に疑問を持たせないために、プレゼンテーションではまず「結論」を述べましょう。「結論」を最初に聞くことで聴き手は聞く準備が整えられます。そして、「結論」に対して「なぜ、そうなんだろうか」と聴き手は次を聞きたくなります。聞きたくなったところで「…というのは」と結論を証明するコンテンツを述べます。

たとえば、「…が大切です。というのは、理由は3つあります。まず、1つ目は、本を読む目的は仕事に役立てることであり、2つ目は、…」と続けます。

プレゼンテーションのシナリオは、まず結論を述べ、その結論を証明するコンテンツで事実を示したり事例を説明したり他と比較してみたりデータを紹介したりします。このプロセスは聴き手が聞きたいプロセスなのです。

このプロセスで伝えると、聴き手は常に結論とコンテンツを結びつけながら話し手の話に集中します。集中しながら聞くので、聴き手は「わかった!」と理解し、「その通りだ!」と合意しやすくなります。

しかし、残念ながら、理解し合意しただけでは行動に結びつかないことがあります。そこで、再度、結論を述べて聴き手に「そうしてみよう!」と行動を促しましょう。

“結論→理由→結論”のプロセスでシナリオを組み立てるとプレゼンテーションが成功する確率が高まります。

聴き手が知りたいコンテンツを聞きたいプロセスで伝えてくれる話し手には信頼を寄せ、合意・行動をするためにプレゼンテーションを聞いてくれます。

プレゼンテーションをするときは、結論から述べましょう。
聴き手は話の最終到着地点がわかります。着地点がわかれば安心して話を聴いていられます。
途中で「何が言いたいのだろうか」と無意味な努力しなくても済むのです。

まとめ

プレゼンテーションで重要なことは、聴き手に伝わることです。そして、話し手が意図した行動へ聴き手を導くことです。そのためには、聴き手の立場に立って、聴き手の思考回路とシンクロしたシナリオを組み立てましょう。話し手も聴き手も分かりやすく組み立てるシナリオこそがプレゼンテーションを成功に導きます。

[pc]

[/pc]

[sp]

[/sp]

[pc]

[/pc]

[sp]

[/sp]

監修

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
特定非営利活動法人国際プレゼンテーション協会 理事長
一般社団法人プレゼンテーション検定協会 代表理事
アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社 代表

日本におけるプレゼンテーション分野では、先駆者として、その能力向上や啓蒙活動に寄与。これまでに、企業や団体におけるプレゼンテーションの教育や支援、大学におけるプレゼンテーション技術の指導などを手がける。関連書籍や雑誌の執筆も多数、講演活動もおこなう など、プレゼンテーション分野の第一人者。
また、コミュニケーションに関して造詣が深く、一方で、経営コンサルタントとして、様々な企業や団体でビジネス・プロフェッショナルとしての必要なリテラシーを支援、開発、養成、指導の助言、指導、支援もおこなっている。
主な専門分野は、ビジネスに不可欠な戦略的思考と行動、およびコミュニケーション能力。例えばビジネス戦略、営業戦略、戦略的目標管理、商品開発、論理的思考技術、プレゼンテーション技術、ミーティング・マネジメント、チーム・ファシリテイション、多様性のマネジメント、変革のリーダーシップ、グローバル・ビジネス・マネジメントなど。

戦略的プレゼンテーションの技術」

第1章:プレゼンテーションの戦略
第2章:プレゼンテーションのシナリオ
第3章:インタラクティブ・プレゼンテーション
第4章:プレゼンテーションのデリバリー技術
第5章:ビジュアル化技術
ワークシート集、参考資料

八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版 232頁 定価2,530円(本体2,300円+税10%)

プレ検公式テキスト
パーフェクト・プレゼンテーション」

第1章:プレゼンテーションを始めよう
第2章:聴き手分析
第3章:目的と目標分析
第4章:場所と環境分析
第5章:シナリオの構築
第6章:3部構成のシナリオ・ツリー
第7章:デリバリー技術
第8章:ビジュアル・プレゼンテーション
第9章:双方向のプレゼンテーション

八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版並製 431頁  定価3,300円(本体3,000円+税10%)