プレゼンテーションの効果を高める!資料作成プロセスを学ぼう

プレゼンテーションをおこなうことが決まったら真っ先にパワーポイントを立ち上げていませんか?テンプレートを選び、1枚目のスライドにある「タイトルを入れる」欄に何を入力するか思案していませんか?
プレゼンテーションといえばスライド、この考えはもう止めましょう。スライドはプレゼンテーションの効果を高めるために用いるものです。

事前にメールなどで資料を配布した上でプレゼンテーションをすることが増えているなか、資料を読み上げるだけのプレゼンテーションをするならば、わざわざ同じ時間と環境を共有して人が集まる意味がありません。
今回は、プレゼンテーションの効果を高めるビジュアル資料の必要性と作り方の手順、資料の選び方をお伝えします。
なんとなく作成してきたビジュアル資料をバージョンアップしてプレゼンテーションを成功に導きましょう。

ビジュアル資料の必要性

今では、ビジュアル資料はパワーポイントで作ったスライドが大半です。パワーポイントが出現する前はOHP(Overhead Projector)や映写機を用いていました。

なぜ今も昔も、プレゼンテーションでビジュアル(視覚)資料を用いるのでしょうか。

実は、人が得ている情報のうち、60パーセントは視覚からの情報なのです。聴き手が目から得る情報が、聴き手の理解を促進し、合意、行動へ導くことに効果を発揮します。そのため、プレゼンテーションではビジュアル資料を用いられているのです。

ビジュアル化することには“4つの目的”があります。

・興味をもたせる
・理解を促進する
・時間を節約する
・記憶に留めさせる

これらを満たすことがプレゼンテーションの効果を高めるのです。

ビジュアル化の4つの目的についての詳細は下記の記事を参照ください。
ビジュアルで差がつく!聴き手に伝わるプレゼンテーション 

資料を用いず口頭で伝えるだけでも、この4つの目的を満たせる場合もあります。

しかし、専門的な内容や複雑な概念や新しい情報など、口頭で伝えることが難しい場合は、ビジュアル資料を用いて4つの目的を満たす必要があるのです。

注意しないといけないのは、話し手のスピーキングガイドとして資料を作成しないことです。あくまでもビジュアル資料は、聴き手のために用いるものです。

作ったビジュアル資料がプレゼンテーションの効果を高めるものになっているかどうか自信が持ていないという方は、次の項目をチェックしてみましょう。

□聴き手の理解を助けるか
□聴き手の興味をわかせるか
□聴き手の記憶に残るか
□説明時間を節約するか

ビジュアル資料を用いないほうが伝わるプレゼンテーションに出会うことも多くあります。

投影する機器類の扱いに振り回されていたり、スライドの内容に縛られて臨機応変さを欠いていたり、スライドを読むことに執着して聴き手の反応を見る余裕をなくしていたり・・・。

ビジュアル資料は、プレゼンテーションを効果的にしてくれるものですが、反面、失墜させる可能性もあるということを肝に銘じましょう。

ビジュアル化の手順

ビジュアル資料を手当たり次第に作成すると、プレゼンテーションの失敗につながりかねません。プレゼンテーションを効果的にするビジュアル資料の作成には、“効果を高める”ための手順があります。

1. 3P分析が基本

4つの目的を満たすビジュアル資料を作成するには、3P分析の結果を再度見直すことから始めます。

3P分析結果では、聴き手の関心・興味・課題、聴き手はなぜ聞くのか、聴き手は何を得たいのか、聴き手の集中力を阻害しない環境づくりはなんなのかなどを再確認します。

再確認したら、3P分析結果に基づいて構築したシナリオのどの部分でビジュアル化の4つの目的が求められるのかを見極めます。

・口頭説明だけでは理解しにくい内容
・興味をわかせたい箇所
・説明で時間を節約したい内容
・記憶してほしい箇所

これらを聴き手目線で明確にしていきましょう。

3P分析結果とシナリオ構築の再確認によって、何をビジュアル化すればよいかが明確になります。3P分析をすることにより、やみくもに作成したスライドとは違い、しっかりと聴き手目線に立った資料になるのです。

3P分析について詳しく知りたいかたは以下の記事をお読みください
プレゼンテーション成功の決め手!3P分析から準備を始めよう

2. ビジュアル・ツールを選定しよう

3P分析結果には、聴き手の人数や属性、プレゼンテーションの目的・目標、会場、部屋の形状、設備・備品などの情報があります。

この情報を踏まえて最適なビジュアル・ツールを選定していきます。フォーマルなら対面でスクリーンに拡大投影、インフォーマルなら出力紙やパソコン画面を共有、双方向のディスカッションを交えたいならホワイト・ボードやフリップ・チャートを併用するなど、選ぶツールは状況によって異なります。

伝える内容を資料にしていくよりも先に、まず3P分析結果を再度参照して、最適なビジュアル・ツールを選ぶことから始めましょう。

最適なビジュアル・ツールを選定する際、「作成の難易度」「操作の熟知度」も重要な選定基準です。プレゼンテーション準備で作成にかけられる時間やコストに制限があったり、自分で作成するか外注するかでも活用できるツールが変わります。

また、パワーポイントスライドの投影機能や画面共有方法をよく知らないで活用しては、せっかくの資料が台無しです。

3.情報収集と情報加工のコツ

3P分析結果とシナリオ構築の再確認によって、明確になったビジュアル化すべき箇所と選定したビジュアル・ツールに対して、作成に必要な情報を集めます。よくあるのが、ビジュアル資料を作っていくうちにデータ不足に気づくことです。

たとえば、「競合他社と比較すると市場の優位性は低い」と言葉だけで伝えても抽象的です。この部分が提案を通すために重要な課題提起であるならば、「市場の優位性」を競合他社と比較したグラフを示すことです。

“優位性の低さ”を目の当たりにした聴き手は、その解決策となるあなたの提案にグッと耳を傾けるでしょう。そのためには、抽象的な表現で曖昧に伝えるのではなく、具体的な情報を収集することです。

必要な情報が収集できたら、次に集めた情報を加工します。プレゼンテーションの効果を高めるビジュアル資料は、聴き手の理解・興味・記憶の視点でいかに情報を加工するかに尽きます。

生のデータをそのまま示しても聴き手にはピンときません。また、話し手が意図していない解釈をされることがあります。

効果的に伝わるか逆効果になるか。情報は両刃の剣です。
数字情報はグラフ化、文字情報は図解化やチャート化します。グラフは多種多様ですが、それぞれに表現する目的があります。図解もその形や組み合わせ方で表現することが異なります。最も伝えたいことを表せる的確な加工をしましょう。

もし、あなたが聴き手をうならせるロジカルなプレゼンテーションをしたいと思うなら、聴き手が持っていない情報を集めて加工したビジュアル資料を作成することです。ただし、情報が多すぎると聴き手は混乱します。情報を加工しすぎると聴き手はうがった捉え方をします。ビジュアル化の4つの目的を満たす適切な“情報”を取捨選択することを忘れないようにしましょう。

プレゼンテーションの情報収集について詳しく知りたい方は以下の記事をお読みください。
プレゼンの情報収集でお悩みの方必見!すぐに使える効率的な情報収集のコツ 

4.ドラフトの作成

情報を収集し加工ができれば、いよいよ資料の中身を作成していきます。プレゼンテーションの効果を高めるビジュアル資料にするには、いきなり作り込まないで大まかに作ってみること。そこで、ドラフトを作成しましょう。「ドラフト(draft)」とは、下書き、原稿、草案、図案、ラフ画を指します。

3P分析結果とシナリオ構築の再確認によって明確にしている「何を・どこを」ビジュアル化するか、シナリオに沿って全体をドラフトとして作成しましょう。ドラフトなので、情報収集と情報加工をしながら取り組むことができます。

ビジュアル資料のドラフトがひととおり作成できたら、体裁を決めて、1ページずつ具体的に作成していきます。この作成段階でも、ビジュアル化の4つの目的を満たしているかを忘れないようにしましょう。

最後に、聴き手目線で校正をしてください。誤字脱字、変換ミス、図の配置、色使いなどを確認することはもちろん、情報の過不足や正確性の検証も重要な確認事項です。

プレゼンテーションの効果を高めるためのビジュアル資料です。思わぬところで逆効果にならないように、最後まで気を抜かずに仕上げましょう。

説明資料と配付資料を使いわけよう

ビジュアル(視覚)資料は「説明資料」と「配付資料」とで使い分けたり、併用したりすることが、より効果を高める秘訣です。

図の出典:戦略的プレゼンテーションの技術

1.説明資料の活用

説明資料とは、プレゼンテーション時に口頭で伝える際に聴き手へ提示する資料を指します。ビジュアル化の4つの目的を達成するために用いる資料です。

パワーポイントスライドを投影

ほとんどのプレゼンテーションで用いられている説明資料がパワーポイントスライドです。
効果的に活用するためには、
-スライドに詳細説明(文章)を書かない
-話し手の目線は聴き手へ注ぐ
-聴き手の目線や反応を見ながら進行する

なお、この説明資料を聴き手に配付するかどうかも重要な選択です。

投影データは事前提出との要請があるプレゼンテーションが増えてきています。学会やシンポジウムなど大きなプレゼンテーションでは、提出した投影データは変更してはいけない制約もあります。事前提出の際は、そのデータは聴き手へ事前配信されるのか、当日使用するパソコンに保存されるのか、提出後の用途を明確に把握しておきましょう。

聴き手の記憶に残す目的で投影データを事後配付することもあります。この場合は、投影データではなくPDFファイルか紙に出力して渡してください。渡した後に資料が“一人歩き”することを想定しての対策です。出力は、A4サイズ1枚に1スライドか1枚に2スライドか、カラーかモノクロか、見やすさの観点で工夫をします。

ただし、聴き手が資料を求める用途が「上司との検討資料にしたい」「稟議資料にしたい」という場合は、「説明資料」ではなく「配付資料」を提示しましょう。「説明資料」には、詳細が記載されていませんので。

・プレゼンテーション・パネル/フリップボード

少人数の聴き手に対して対面でプレゼンテーションをおこなう場合に効果的なツールです。

プレゼンテーション・パネル/フリップボードとは、紙芝居をイメージしてもらえるとわかりやすいでしょう。ビジュアル化した内容をパネル/ボードに貼り付けたり書いたりして提示します。このツールは、部分的にめくる工作や並べて提示することで関係性を説明するなど、プレゼンテーションで聴き手と双方向のやりとりをしたい場合に効果を発揮します。

※フリップボード(flip board):映像制作用語、文字や図を書いた板のこと。

2.配付資料の活用

配付資料とは、プレゼンテーションの内容を聴き手が手元で読む資料を指します。詳細説明が記載された資料です。

・配付資料を用意するかどうか

プレゼンテーションは同じ時間と同じ環境を共有して人が人に伝えるばかりではありません。プレゼンテーションに出席できない、出席者から相談を受ける、合意・行動を協議する、決済する、といった場合、配付資料で意図する行動へ導かなければなりません。こういった場合に、じっくり自分のペースで理解を深めることができる配付資料が必要になるのです。

また、提案書や企画書は配付資料にすることで、明確に確実に伝えたい内容を伝えることができます。説明資料では、詳細な内容を口頭で伝えたとしても、聴き手の捉え方次第になるため、真意が伝わっているとは限りません。配付資料であれば稟議書に添付してもらうなど、次の行動へつなげる重要な役割を担えます。

ただし、配付した資料は一人歩きすることを忘れてはいけません。コピーライトなど知財の所在を明確にすることを忘れてはいけません。

・配付資料を作成する

配布資料は、手元でじっくり読んで理解を促進する資料を作成しましょう。

一般的には、A4サイズ縦で作成します。プレゼンテーションで提示したビジュアルを挿入し、その解説、および関連事項や詳細情報を記述します。文字の大きさやフォント、見出し、改行や段落、挿入図の配置、頁数、などの読みやすさを工夫します。モノクロで出力する場合への配慮も必要です。また、理解促進を助ける参考情報の添付や参考文献の出所明記も忘れてはいけません。

さらに、表紙と裏表紙をつけたり、綴じ方を工夫したりして、中身を引き立たせる外見の工夫もあるとよいでしょう。

配付資料を作成することで、プレゼンテーションで伝える内容が明確になり、話す際の自信につながります。しかし、説明資料と配付資料を両方作成するには相当な時間と労力が必要であることを覚悟しましょう。

・配付のタイミング

話し手としてはプレゼンテーション終了後に配付したいところです。なぜなら聴き手の手元に資料がなければ、目線は話し手に注がれ、聴き手をプレゼンテーションに集中させることができます。

配付資料をプレゼンテーション終了後に配付する際は、プレゼンテーション開始時に「資料は終了後にお配りします」と伝えておきましょう。手元に資料がないと落ち着かない聴き手もいるものです。だからか、聴き手としてはプレゼンテーション開始前に配付してもらいたいという声があがります。事前に内容を把握しておきたいとか、プレゼンテーション中にメモをしたいとか。事前に資料を配付すると、配付資料で満足してプレゼンテーションは欠席という人もでてくる想定が必要です。また、事前に配付資料を提示したならば、プレゼンテーションでは、聴き手の目線を話し手に注がせ、集中し、その場で確実に理解・合意・行動へ導くことに最善を尽くしましょう。

配付の方法も多種多様です。メール添付、共有サイトへアップロード、大容量送信、チャット提示、手渡し、郵送、など。最近はファイル共有が増えている傾向です。配付資料のファイル名は受け取った際にわかりやすい名前をつける配慮も忘れてはいけません。

まとめ

プレゼンテーションの効果を高めるビジュアル資料を活用するには、その必要性を踏まえて、手順に沿って作成し、適切な資料を選ぶことです。説明資料と配付資料を使い分けるだけで、ビジュアル資料がバージョンアップします。 たかが資料、されど資料。手順を踏んでしっかりと準備をしてプレゼンテーションを成功に導きましょう。

監修

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

プレ検創設者

日本におけるプレゼンテーション分野では、先駆者として、その能力向上や啓蒙活動に寄与。これまでに、企業や団体におけるプレゼンテーションの教育や支援、大学におけるプレゼンテーション技術の指導などを手がける。関連書籍や雑誌の執筆も多数、講演活動もおこなう など、プレゼンテーション分野の第一人者。
また、コミュニケーションに関して造詣が深く、一方で、経営コンサルタントとして、様々な企業や団体でビジネス・プロフェッショナルとしての必要なリテラシーを支援、開発、養成、指導の助言、指導、支援もおこなっている。
主な専門分野は、ビジネスに不可欠な戦略的思考と行動、およびコミュニケーション能力。例えばビジネス戦略、営業戦略、戦略的目標管理、商品開発、論理的思考技術、プレゼンテーション技術、ミーティング・マネジメント、チーム・ファシリテイション、多様性のマネジメント、変革のリーダーシップ、グローバル・ビジネス・マネジメントなど。

戦略的プレゼンテーションの技術」

第1章:プレゼンテーションの戦略
第2章:プレゼンテーションのシナリオ
第3章:インタラクティブ・プレゼンテーション
第4章:プレゼンテーションのデリバリー技術
第5章:ビジュアル化技術
ワークシート集、参考資料

八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版 232頁 定価2,530円(本体2,300円+税10%)

プレ検公式テキスト
パーフェクト・プレゼンテーション」

第1章:プレゼンテーションを始めよう
第2章:聴き手分析
第3章:目的と目標分析
第4章:場所と環境分析
第5章:シナリオの構築
第6章:3部構成のシナリオ・ツリー
第7章:デリバリー技術
第8章:ビジュアル・プレゼンテーション
第9章:双方向のプレゼンテーション

八幡紕芦史著 アクセス・ビジネス・コンサルティング株式会社
A5版並製 431頁  定価3,300円(本体3,000円+税10%)